接触不良が起きづらいジャックとして有名なPure Tone Jack。当方でも積極的に使っていますが、いくつかの注意が必要な場合があります。
まず前提として、一般的なベース・ギターに使われるジャックはモノラルかステレオのいずれかです。パッシブの場合はモノラルが使われますが、アクティブの楽器はプラグを挿していない間は電池が消耗しない仕様にするのが普通で、そのためにはステレオのジャックが必要になります。ステレオのジャックにモノラルのプラグを挿すとTRSのRとSがショートするので、それを電池のスイッチとして利用しているわけです。
ステレオジャックの本来の使い方としてステレオ出力させることに使う場合もありますが、それは稀なケースです。

Pure Toneにもモノラルとステレオがラインナップされています。左がモノラルで、右がステレオです。
結論から言うと、Pure Toneのステレオはオススメできません。
まず、各端子を保持しているベークライト(だと思う)の板が極端に薄いです。そのため強度に難があり、端子が空回りしてショートする事例を複数確認しています。割れて破損する可能性も高いでしょう。
また、ジャックを楽器本体に取り付けるためのネジ切り部分が短いものしかありません。パネルやピックガードに取り付けるには問題ないですが、ボディ木部に直付けの場合は木部にある程度厚みを持たせているのが普通なのでそのままでは取り付けられない場合があります。

更に、2つの対向する接点を設けることで接触不良を起きにくくするというPure Toneのコンセプトが徹底されていません。対向する接点があるのはTだけで、RとSには端子が1つずつしかありません。
まあ普通のジャックならS用に積極的(?)な接点があるわけではないので1つあるだけマシとは言えます。筒に棒を挿せばどこかが当たってるだろっていうのが普通のジャックのSの接点です。
モノラルのPure ToneはTに2点、Sにも2点の接点を設けているのが強みです。

ここでSwitchcraftのジャックを見てみましょう。いずれもステレオで、ネジ切り部分の長さが異なるものです。取り付ける対象に合わせて選ぶことができます。
ネジ切り部分が長くて困ることは基本的に無いので長は短を兼ねると考えても良いですが、短いものの方がが保持板の厚みが厚くなっているので強度は有利でしょう。値段も安いです。
ともあれ、Pure Tone Jackがオススメできるのはモノラルだけで、ステレオが必要な場合は基本的にSwitchcraftを使っています。

話は変わりますが、こんな形のジャックもありますね。バレルタイプ、シリンダータイプ等いろんな呼び名があります。Pure Toneのラインナップにはこのタイプもありますが、これならまあ使っても良いかな、とは思います。
というのも、このタイプのジャックは総じて筒の中の端子が細くて弱いので接触不良が非常に起きやすいのです。よってそもそも使わないに越したことはないパーツなんですが、Pure Tone製なら接触の信頼度が多少は上がっており、このタイプのジャックの大きなマイナス要素をゼロに近づける程度の効用はあると考えます。
ただ重ねてになりますがそもそもこの形のジャックは使わないのが一番です。サイドジャックで楽器本体に開ける穴径を抑えられるのは利点ですが。ただそもそもサイドジャックというのが信頼性の損なわれる要素を多く含みうる構造だと考えています。この事もそのうち書きたいと思います。
さて、ここまでPure Toneはいいぞ、ただしモノラルに限る、という話をしてきました。
最後にもう少し補足で組み込み時の注意を書こうと思います。

まず、端子の締まりがキツすぎてプラグの抜き差しが硬いことがあります。その場合、何らかの方法で端子を広げてあげるのが良いです。接点に傷をつけないようにしつつ、広げた後もプラグに各接点がきちんと接するように注意しましょう。
普通のジャックはTの一点でプラグを支えているだけなので、ある程度の硬さによって接触が確保されていると言えます。T自体の接触はもちろん、そこでプラグ全体を傾けることでSを接触させているわけです。

書いてて気づいたんですが、ステレオジャックのTとRが対向する位置ではなく120°の位置にあるのは端子の金属板の歩留まりだったり製造上の都合もありそうですが、Sの接触を確実に得るという目的(あるいは少なくとも、その効果)がありそうですね。
TとSそれぞれに対向する2つの端子があるモノラルのPure Toneは、端子による保持をある程度緩くしても確実な接触が保たれるのが利点であると言えます。
最後に、リード線のはんだ付について。
昔は違ったように記憶しているんですが、現行品のPure Toneははんだの濡れ性がイマイチです。

そのため普通にリード線をはんだ付しようとすると端子が濡れず、リード線だけにはんだが流れてしまいます。

当然これだとすぐにモゲます。

なので、まず端子にだけはんだを乗せるのが良いです。穴の内側、裏側まで濡らします。
少し長めに(と言っても数秒の世界)熱を加えるだけで普通に濡れるので、あえて表面を削ったりする必要はないでしょう。

乗せたはんだを除去します。

それからリード線を付ければ、適切な接合が得られます。
このように端子の硬さやはんだの乗りにくさといったちょっとした難点はあるものの、そうした部分に手を掛けてでも使うだけの接触の信頼性の高さがモノラルのPure Tone Jackにはあると考えています。
これが使えることがパッシブ楽器の最大の長所と言っても過言ではないです。
今後も変わらずにいてほしいですし、ステレオの方も何らかの改善があれば良いなと思います。
とはいえジャックというのは結局は消耗品なので、より安価なジャックをこまめに交換して使うのも良いでしょう。何事もボロい高級品より新品の安物の方が正しく仕事をするということは多いです。そこは考え方、扱い方次第です。