Sterling RAYSS4 ヘッドレス化

フレットレス化

30インチスケールのRAYSS4をヘッドレス化しました。
私物楽器なので今回は完全に趣味の話です。

スケールが短いことに合わせてボディもひとまわり小振りになっているので、長いヘッドレスブリッジだとボディから大きく飛び出してしまいます。
そこで今回は全長の短いMera Guitars製のブリッジを使うことにしました。

Meraは楽器本体も製作しているメーカーです。楽器本体の実物は見たことがないのですが、ブリッジはPadalkaやMetaでも使われており、数回触ったときの印象が良かったので安心して購入。

ブリッジ台座に合わせてボディを落とし込みます。

各弦独立型ブリッジであり、かつ今回は弦がヘッド側でも電気的には繋がらないため、弦アース線は各ブリッジに踏ませる必要があります。

独立ブリッジの隙間から銅箔やリード線が見えるのは嫌なので、落とし込みの中で穴を繋げてリード線を通します。

さて、一般的なヘッドレスブリッジは台座に対してブリッジ本体を固定する位置を手で前後に動かして固定する仕組みになっていますが、Meraは凝った構造で、台座内のネジ受けの前後位置を横からネジで調整できるようになっています。

台座裏

ただそのネジにアクセスできるようにするにはボディ側にレンチが通るだけの貫通穴を設ける必要があります。そしてオクターブ調整の際はいちいちその貫通穴から調整ネジにレンチを通さなければなりません。
それはちょっと加工も調整も面倒そうなので今回はオクターブ調整ネジを外してしまいました。ネジがなければ台座内のレールに沿って自由にネジ受けが動くので、一般的なヘッドレスブリッジ同様に手で動かして位置決めができます。一回決めたらそう触るもんでもないんで、加工と調整の手間をトータルで考えたらこの方が妥当でしょう。

台座がつきました。このタイプの台座で4点で止めてるのは珍しいかもしれません。たいてい2点ですからね。安心感あります。

次にヘッドを切断します。断面がペグ穴・ネジ穴を重ならないように。

ヘッド表はボディに合わせて塗装しました。

E弦にはエクステンダーキーをつけ、残り3本はMera製ヘッドピースで弦をロックします。

ブリッジ側でも弦を直接ロックするので、弦のどちらの端にもボールエンドが不要な構造です。そのため弦のどの範囲を楽器に張るか、切り方で自由に決めることができます。結果、30インチスケールでありながら一般的なロングスケール用の弦でも細まりポイントをE弦のナット-ペグ間に持ってくることができます。まあ1/2″径ポストにE弦の太い部分が巻き付くぶんには実用上問題ないっちゃないんですが…

さてそのエクステンダーですが、チューニングを下げる際にレバーを勢いよく操作すると大きく回転してしまい、スムーズに戻すことができません。

そこでレバーの動きを止めるネジを取り付けました。
この話はちょっと長くなるんで詳しいことは別の記事で書きたいと思います。

話が前後しますが、ヘッドを切る前からピックアップはリアシングル1発にしていました。

昔スティングレイのフレットレスを使っていたことがあり、そのときはPUを【前コイル/前後シリーズ/前後パラ/後コイル】と切り替えられるようにしていました。その中でも後コイルで使うことが多かったです。でもスティングレイのPU位置は後コイルでもジャズベよりはややネック寄りなので、フレットレスジャズべ(いわゆる、なレスポンス)を期待すると「ギリギリ惜しい」感触にしかなりません。なので今回は60年代ジャズベ相当の位置にシングルを乗せることは最初から決めていました。PU自体は何でもいいんでSJB-1です。

ピックガードもリアシングル1発に合わせて作り直しています。

そのうえで、見た目をスティングレイっぽく保つためにダミーのPUを作りました。

まず黒ベーク板をカット。シングルと並べたときの合計の短手方向(弦の長さ方向)の長さがスティングレイPUと同じになる寸法にしています。

それにポールピースを模したアルミ円板を埋め込みます。アルミにしたのは加工の都合ですが、ただのダミーなので無駄に磁石や磁性体を使うのは避けたかったというのもあります。まあ気持ちの問題ですが

ポールピースのヘアラインの向きはバラバラにした方がそれっぽいと思ってそうしました。でもわざとバラバラにするってのもそれはそれで難しいもんです。あえて合わせないようにしてる作為が滲むというか…

両面テープでピックガードに固定します。

というわけで完成。

コントロールはごくシンプルにon/offスイッチとトーンだけです。
そういえばコントロールプレートはアルミで作り直しています。軽量化。

さて、このMeraのヘッドピース、一応ヘッドに対してはネジ2点で固定されているので悪くはないんですが、それでもやはり一般的な独立型ヘッドピースと同様に弦の保持力の低さ(=ロックする際に求められる締付トルクの高さ)に対するヘッドへの取り付け強度の低さに難がある手応えで、繰り返し弦を付け外ししているといずれダメになりそうです。

ヘッドピースはネジ2本でヘッドに固定され、そのうちの一方のネジ頭に乗せた金属板と平先イモネジとで弦を挟んでロックする構造。

ブリッジ側でも弦をロックする機構となっているのは既に述べた通りですが、こちらのロックはヘッドピースと比べると安心感があります。

ブリッジ側の弦を受ける部分に窪みがあり、とがり先のイモネジを締めると弦がV字に潰されます。平面で挟んでいるだけのヘッドピース側よりはるかに低いトルクで弦がロックできます。

またブリッジ台座もボディ木部へは4点のネジで固定されているので、弦の付け外しによる木部への負荷はヘッドピース側のそれと比べてきわめて小さいはずです。

なので今はヘッドピースで弦をロックはせず、ボールエンドをヘッドピースに引っ掛けて運用しています。

弦の張力による負荷はそれほど大きくないので、これで安心でしょう。

ヘッドレス楽器では、弦をロックする際にヘッドピースの取り付けネジ周辺が喰らう負荷が楽器の寿命を決めていると言っても過言ではなさそうです。一体型のヘッドピースであれば取付強度は高いはずですが、独立型はマルチスケールや多弦、または今回のように全弦に対して使わない特殊な用途などに対して融通が利くという利点があります。

可能ならヘッドピースは一体型にする、仕方なく独立型を使う場合には妥当なパーツを適切に取り付ける、という判断・妥協が必要なのがヘッドレス楽器の現状でしょう。
まだまだ勉強したいと思います。

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